おとなの社会見学第3回のテーマは
「金継ぎ」
■はじめに ~金継ぎとは~
金継ぎ(きんつぎ)は、割れたり欠けたりした陶器を漆で継ぎ、金や銀で修理する日本の伝統技法です。
壊れてマイナスになってしまったものを、完全に修復してゼロに戻すことは不可能。
日本の金継ぎ技法は、壊れてしまったことを惜しみながらも受け入れ、あえて傷をプラスとしてとらえ
金や銀で目立たせることで 傷を楽しみ、新しい美しさ・出会いを生み出す技法です。
西洋にも壊れてしまった陶器を修理する文化がありますが、西洋の技法は日本の手法とは対照的で
破損前の状態にできるだけ近付け、傷が目立たないように修理します。
修理というよりは、復元に近いかたちです。
傷を楽しみ、プラスにしてずっと大切にしようという 日本人ならではの大切なものの愛し方・心を感じる手法です。
体験者 ■Moe~「金継ぎ」を行う器は、Moeさん自作の陶器。
形も色も悪いのですが、美術の工芸の時間に自分で成形し、釉薬もつけたオリジナルの器です。
自分のサインや模様も入れていて、私にとっては特別な思い入れのある器です。
欠けてしまって残念ですが、まだ使い続けたいという思いがあります。
先生 ■中村彩子 (ギャラリー「CASAICO」代表)
作家ホームページ
http://saiko.casaico.com/news.html
一度壊れたものをゼロに戻すのではなく、その傷跡を景色として楽しむ
という日本人の心の豊かさに惹かれ、金継ぎを始めました。
そのような技法や美意識を創り上げた先人へ敬意をはらい
器の製作者や持ち主の想いを感じそこにまた自分の手跡を残せる喜びも感じています。
■目次
・第一工程 欠けている部分をパテで修理
・第二工程 コーティング
・第三工程 金粉をふりかける
・完成
日常で必ず使う道具「器」。
家族が用意したものや、自分で購入したもの、プレゼントされたものなどを日々使っていますが、時に壊れてしまうことがあります。
器は一度欠けたり壊れてしまったら、もう元には戻らないもの。
思い入れの詰まったものでもさよならして、新しいものに買い換えていることでしょう。
汚れたら、破れたら、壊れたら、「買い替える」。
新しいものを容易に探し、手に入れることが出来る今、「直す」ということをしなくなってしまったように感じられます。
「金継ぎ」とは耳慣れない言葉ですが、壊れてしまった陶磁器を修復する日本古来の技術。
物には「作る」「売る」「買う」「使う」という長い時間を経たストーリーが存在しますが、
そこに「繕う」という時間を加えて、もっと長くその道具たちとの時間を大切にしていきたいと思いませんか。
今回は、物を「永く大事に使う」がテーマです。
■使用する材料
①ハイクイック(エポキシ接着剤)
2液を混合して使用するタイプの 5分硬化型高粘度エポキシ系接着剤です。
②新うるし(代用漆:カシュー塗料)
簡単に様々な種類の素材に塗ることができ、つやも良く上品な仕上がりになる植物性のうるし系塗料です。
③ヘラ・デザインカッター
パテで修理する際に使用します。竹ヘラは割り箸でも代用できます。
④耐水サンドペーパー・水
荒さ:1000番を使用。数字が大きいものほど目が細かくなります。
水を使用することですべりがよくなり、つやが出て綺麗に仕上がります。
⑤純金消粉
今回はこちらの「純金」を使って金継ぎを行います。
純金の他にも「銀」や「真鍮」などでの修復も可能です。
⑥筆、真綿
金粉を振りかけるときに使う筆と、金粉を振りかけた後に表面を磨く真綿です。
▼金継ぎの全工程を動画で紹介しています。
欠けてしまった陶器は、見事に新たな美しい姿へと変貌を遂げました。
永く大切に使う為に、取扱いの注意について学びましょう。
ただの修理ではなく、金継ぎという技法を用いて傷を装飾したことで
より一層の愛着が沸くと同時に、「器」としての価値も高まった様に感じます。
食器用洗剤を使いスポンジで洗うのは問題ありませんが、オーブン、電子レンジ、研磨剤、たわしなどは使用できません。
金継ぎをした器は、傷をいたわってあげるように使うことが大切です。
■金継ぎを終えての先生の感想
今回は本漆を使用しない、簡易的な金継ぎ方法でお直しをしましたので、カブレなどを気にすることなく
リラックスしてできたと思います。
加藤さんはとても手先も器用で丁寧な作業ペースで、私自身もとても安心して教えることができました。
実は、もし失敗してもやり直すこともできちゃうのです。
なので、私不器用だわ。という方でもどうぞご安心ください。
■金継ぎを終えてのMoeさんの感想
思えば、何か作ることは今まで多くありましたが修正して
綺麗に直すということはあまりしたことが無かったかもしれません。
取れたボタンを縫い直すくらい。
楽しみながらもまた使えるように工夫することで
その物としっかり向き合うことができ、更に愛着が湧いてきます。
カサイコでの豊かな時間の中で、消費するばかりではなく、まだ使い続ける工夫を
楽しみながら行えるようになりたいと感じました。
また、中村先生にご指導して頂きながら楽しく作ることができたので器を見るとその体験が思い返されます。
工芸の授業、カサイコでの体験、器に思い出が増えるともっと大事に思えますね。
(電子レンジに入れないように注意をしながら)ずっとずっと大切に使っていきたいと思います。
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